2012年4月11日水曜日
思い出回想バス「おれとじじい」
あれは約20年くらい前の冬の寒い日。
ACE氏、他何人かでうちの近くの駐車場で遊んでたわけ。
そろそろ帰らなきゃって時間になって、
ACEがロックマン2借りていきたいって言うからおれは家まで取りに帰ってあげた。
もうかなり空が暗くなってて小学生にはこわかったんだよ。
こわかったからまじダッシュで戻った。
そしたらあいつらもう帰ってたんだよね。それはいまでもまじ謎。
かなりむかついて追いかけようかとおもったんだけど、
むかつきよりそこに1人ってことの恐怖心がいきなり勝ってきた
近所によく近づいちゃいけない家みたいのなかった?
そこの駐車場の近くには結構クレイジーなおじいちゃんが住んでるって
有名な家があった
いつもはふざけて石を投げ入れたりしてたんだけど
夜だったせいもあってそこがめちゃめちゃ怖い家にみえた。
なんかおばけ屋敷みたいな
変な好奇心が湧いてきてちょっと家の庭を覗いてみようと思って塀に足をかけた瞬間、
いきなり後ろから服をつかまれてひきずりおろされた
おれはまじびびって 声にならない声をあげてコンクリートの上に落ちた
上を見上げて一瞬で気付いた こいつがあのクレイジーで有名なジジイだ!
髪の毛が胸くらいまであってひげはのばしぱなしヘインズっぽいランニングに
ブルマ(黒っぽいブリーフだったのかも) 左手には鎌をもってた
とりあえずまじこわすぎて逃げようとした瞬間、
「お前なにやってたんだ?」とじじい。
「いや…」
「…オレンジのゼリー食うか?」とじじい。
「いらない」
「待ってろ、もってきてやるから」
じじいは門の中に入っていった。
なぜか帰るのは悪いって気になり門の中を覗いてみたら
左手の鎌は草刈りに使っていたってことがわかって安心した
少し待つとじじいがお化け屋敷の中から出てきて門の前にいるおれのところまでかけよった。
右手にはオレンジのゼリーとスプーン。
「ほら」とおれに手渡してきた。
「こっちこい」。
ただっぴろい庭のはしに丸太が横たわっておりじじいはそこに腰をかけた。
真冬なのにブルマのようなパンツとランニング姿、いま思えばかなりヤバいけど。
そのときに恐怖心はもうなかった
おれがじじいの横に座りゼリーを食べると「うまいか?」と笑った。
「おいしいよ」と返した。
じじいはうれしそうにいろいろ話だした。
じじいが1人暮らしだということ。
奥さんと子どもは亡くなっており、唯一の肉親である孫はバスケの留学でアメリカにいるらしい。
うるおぼえだけどたしかそんな感じ。たぶん30分くらいはそこにいたかな。
いつも家に1人だからひさびさに人と話たよ、と笑った。
おれは「じじいの家には近づくなとママたちが話しているよ。なんで?」と聞いてみた。
いま思えばストレートすぎるけど小学生だからしょうがないな。
じじいは苦笑いと共に話しだした
「みんな人と違ったことがあるとその人を受け入れたがらないんだよ。
みんな決められたレールの上から外れたがらない。
それだと逆に子どもの良いところは育たないのになぁ。
お前はどうだ?みんなと違うことをするのが怖くないか?」
「おれはこわくない。今日も授業をぬけだして外で遊んでたんだ。
おれとおれの友だちは特別なんだよ」
「そうか、そりゃたのもしいな!」じじいは大袈裟に笑った。
「おれは昔フォークシンガーだったんだ。お前、歌はすきか?」
「すきだよ」
「そうか、ギターをとりにいくから待ってろ」
じじいが立ち上がろうとした瞬間。
「にげろ~!!!!」
ぴゅー!と言う聞き慣れたロケット花火の音と共に、大きな声が鳴り響いた
花火はじじいの胸元に、バンと音を立てて命中。
花火が飛んできた方角をみると、
塀の上にさっきまで遊んでいたACEたちの姿が。
「たっちゃん(NEN)から離れろー!!!!」
ACEの声とともに何発ものロケット花火が発射された。
おれは危ないと思い丸太から転げ落ちた。
「くそがき!あぶないだろうが!」とじじい。
「うるさい!いかれじじい!」
誰かが打った花火がじじいの額に直撃した。
じじいは丸太にしりもちをつき、そのまま後ろの草むらにたおれた。
「ぎゃあ」じじいは悲鳴をあげた。
「はやくにげてこーい」。おれは倒れているじじいを置いてもんの外へ走った。
みんなのもとにつくと
「大丈夫だった?」とみんな。
「あぁ」。
悲しそうな顔をしてこちらに近づいてくるじじい。
「まだこっちくるぞ、ぶっ殺せー!」誰かが叫んだ。
おれはパニック状態でいつのまにかロケット花火を手に持たされていた。
「たっちゃんも攻撃して!」持っているロケット花火に火をつけられた。
思考が色々追いつかず、花火は「ぴゅー!」と音をたてするっとおれの手の中からぬけていった。「ぎゃっ」
その花火はじじいの顔の右頬に直撃し、じじいは再び倒れた。
「あぁぁ」
じじいは泣いていたようだった。
「いまのうちだ!にげろ~」
みんなで走った。
じじいの泣き声かうめき声かわからない叫び声は次第に小さくなっていった。
「ふざけて隠れていたら、たっちゃんがじじいの家に連れて行かれたから慌てて武器をもってきたんだ」
みんなが誇らしげにいった。
「ありがとう」
じじいが良いやつだったとは言えなかった。
その後、何度もあやまりにいこうとしたが子どものおれには一人でいく勇気がわかなかった。
時折ちかくをとおるとギターの音と、じじいのしゃがれ声が遠くに聞こえた。
何年かたち、そこにじじいの家はなくなっていた。
しんだのか、引っ越したのかなにもわからないが
おれがじじいに謝りにいくことは永遠にできなくなった。
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